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【弁護士コラム】自己破産しても借金がゼロにならない?「免責不許可」となった事案から学ぶ注意点

 江東区・門前仲町周辺で債務整理のご相談を多くお受けしていると、「自己破産をすれば、どんな状況でも必ず借金がなくなるのですか?」というご質問をいただきます。

 自己破産手続を申し立てる最大の目的は、抱えている借金の支払義務を免除してもらう「免責」を得ることにあります。しかし、破産法2521項各号に定められた「免責不許可事由」に該当する行為がある場合、原則として免責は認められません。

 もっとも、免責不許可事由に該当する事実がある場合であっても、裁判所が破産手続開始の経緯やその他一切の事情を総合的に考慮し、裁量により免責を許可する「裁量免責」の制度が設けられています。

 日々の生活や業務に追われる中で、つい誤った対応をしてしまうご相談者様の焦りや苦しいお気持ちはよく理解できます。 しかし、こと「免責」に関して裁判所は非常に厳格な判断を行います。裁量免責の可否を判断するにあたって、裁判所は主に以下の要素を総合的に考慮します。

① 破産手続開始までの事情:年齢、収入、過大債務や支払不能に至った経緯など。

② 免責不許可事由に関する事情:種類、内容、程度、行為の時期、動機、害意の有無、破産手続に与えた悪影響など。

③ 債権者側の事情:債権者の属性、破産者との関係、与信内容や審査調査の状況など。

④ 破産手続開始後の事情:配当の有無、破産者の手続に対する協力状況、反省の有無や程度、再生への意欲など。

⑤ 免責許可がもたらす影響:不許可が破産者の再生に及ぼす影響、債権者に及ぼす影響など。

 これらの事情を考慮した結果、破産者の経済的再生を図ることが社会的に好ましくないと判断されるような悪質性の高い事案や、手続に対する不誠実な態度が顕著なケースでは裁量免責も認められず、「免責不許可」として借金がそのまま残ってしまうことがあります。

 本コラムでは、東京地方裁判所において過去に免責の許否が問題となり、実際に「免責不許可」という厳しい判断が下された具体的な事案の事実関係を類型ごとに詳しくご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながらお読みください。 

財産の隠匿、処分(破産法252条1項1号・2号)

 破産財団に属する財産(現金、預金、保険解約返戻金、不動産など)を隠匿したり、債権者に不利益になるように処分したりする行為は、極めて悪質とみなされます。

⑴ 申立代理人の弁護士に無断で開設した口座に、国税還付金(184万円)を入金させ、破産手続開始後も破産管財人に隠したまま全額を引き出して費消した事案では、免責不許可となりました。この事案では引き出した預金の使途についても管財人に説明をしませんでした。

⑵ 破産手続開始後、保険契約(解約返戻金120万円)の存在を破産管財人に秘匿し、さらにその解約返戻金を担保にして約70万円の貸付を受けて費消した事例も不許可と判断されています。

⑶ 支払不能となった後、所有する2件のマンションについて債権者による差押えを免れる目的で娘らに売却する内容の契約書を作成して所有権移転登記を経由し、うち1件を実際に売却した事案(財産隠匿のほかに巨額の偏頗弁済も存在)も免責が許可されませんでした。

⑷ 破産手続開始の直前に、秘密裏に不動産を売却することを企図し、それが発覚して売却に失敗するや否や破産管財人に対して暴言を吐いたという事案もあります。 

特定の債権者にだけ返済する行為(偏頗弁済:破産法252条1項3号)

 支払不能になった後に、特定の債権者にだけ特別の利益を与える目的で返済(偏頗弁済)を行うことも免責不許可事由です。

⑴ 支払不能後に多額の金員を借り受け、特定の破産債権者に対して弁済期前に約35000万円という巨額の弁済を行った事例では、管財人が否認請求や異議訴訟への対応を余儀なくされ、手続終結までに2年半以上を要する原因となったことなどから不許可とされました。

⑵ 特定の破産債権者(債権額1500万円)について、他の債権者を害する目的で故意に債権者一覧表に記載せず、手続開始後に500万円を弁済した事例も不許可となっています。この破産者は、自身が代表者を務める会社の預金通帳の開示に相当期間応じないといった義務違反行為も行っていました。 

著しい浪費やギャンブル(破産法252条1項4号)

収入に見合わない過大な支出や、ギャンブル、過大な投機的取引によって財産を減少させる行為です。

⑴ すでに約14000万円の債務を負担し、医療過誤訴訟によって多額の損害賠償債務を負担する可能性があった医師が、9300万円のマンションを購入し、さらに合計約1000万円のオーディオ機器を購入した行為が浪費と認定され不許可となりました。

⑵ 破産申立て前9年間にわたり、勤務先から約5300万円を横領し、競馬、パチンコ、高級時計の購入などで費消した事例も免責不許可です。

⑶ 勤務していた証券会社で顧客から預かった金銭を横領して約1億円の損害賠償債務を負った後、勤務時の顧客から25000万円を借り入れ、ネットワークビジネスに出資するなどして費消した事例もあります。

⑷ タクシー運転手等として稼働中に知人等から金銭を借り、株価指数先物取引を行って780万円の債務を負担した事例では、約22年前にも株式投資に失敗して自己破産しており、さらに馬券購入用の専用口座の存在を隠して手続開始後も馬券を購入し続けていたことから、射幸行為に対する親和性が顕著として不許可となりました。 

嘘をついて借入れを行う行為(詐術による信用取引:破産法252条1項5号)

返済能力がないにもかかわらず、嘘をついて信用取引を行う行為です。

⑴ 自身が無職であることを隠し、勤務先の賞与及び退職金で返済可能であると欺罔して、債権者から210万円を借り入れて全額を費消した事例では、破産申立書にはその事実を記載せず、破産者の不誠実性が顕著であるとして免責不許可とされました。

⑵ 借入希望額を超える価値の株式を有している旨の証券会社作成の取引残高報告書の写しを交付して合計1200万円を借りましたが、実際には株式の一部は既に売却済みであり、残りの株式にも根質権が設定されていた悪質な事例も不許可となっています。 

帳簿隠滅・手続上の義務違反・虚偽の債権者一覧表の提出など(破産法252条1項6, 7, 9, 11号)

自己破産手続においては、裁判所や管財人の調査に誠実に協力する義務があります。

⑴ 破産手続開始後もFX取引を継続していた事実を隠すため、管財人に対し、摘要欄の「証券会社に対する送金」を「引出」に変造した銀行口座の取引履歴の写しや、偽造した取引報告書を提出した事例は、書類の偽造・変造行為や調査協力義務違反に該当し極めて悪質と判断され免責不許可となりました。

⑵ 特定の個人債権者(債権額1300万円)を破産手続から排除する目的で、故意に債権者名簿に記載せず、管財人に対してもその存在を秘匿した事例では、債権者平等を著しく害するとして不許可となりました。

⑶ 投資会社へ投資していた事実を隠すため、投資会社に対して郵便物発送回避を依頼し、自らの預金通帳も改ざんした事例も不許可となっています。

⑷ 管財人に対して、母名義の口座から引き出した850万円の使途を説明せず、自己名義の口座の存在も隠蔽し、給与明細書を偽造して収入について虚偽の説明を行った事例も免責されていません。 

過去7年以内の免責(破産法252条1項10号)

過去に免責許可決定が確定した日から7年以内に再度の申立てをした場合も不許可事由となります。

⑴ 免責確定から29か月という短期間で申立てに至った事案で、16か月後には真の必要性なく250万円の借入れをしていた事例は不許可となっています。

⑵ 免責確定から55か月後の申立てであっても、申立書に免責不許可事由の存否について虚偽の記載をし、預貯金の存在を秘匿し、予納金を一切納付しないなど手続に非協力的であった事例は免責が許可されませんでした。 

【まとめ】正直な申告と手続への協力が不可欠です

免責不許可となった事案を紐解くと、多額の浪費や財産隠しそのものの悪質性に加え、「破産管財人や裁判所に対して嘘をつく」「調査に協力しない」「重要な書類を偽造・変造する」といった不誠実な態度が決定打となっているケースが多く見受けられます。

逆に言えば、免責不許可事由に該当する行為があったとしても、早い段階で弁護士に全てを正直に打ち明け、裁判所や破産管財人の調査に真摯に協力し、深く反省する態度を示すことで、裁量免責が認められる可能性は十分にあります。

自己破産をご検討の際は、ご自身にとって不利な事実であっても一人で抱え込まず、まずは専門家である弁護士にありのままの事実をご相談ください。当事務所では、ご相談者様の状況を丁寧に紐解き、再出発へ向けた最善のサポートをいたします。江東区周辺で借金問題にお悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。 

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