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「認知症が進んでいた親が、特定の親族に全財産を譲るという遺言を残していた」「作成されたはずのない不自然な公正証書遺言が出てきた」——近年、高齢化の進展に伴い、遺言者の「遺言能力」をめぐる親族間の紛争が急増しています。
遺言が無効かどうかを争う場合、単に「認知症だった」と主張するだけでは裁判所は認めてくれません。現在の裁判実務では、高度な医学的知見と法的な価値判断が複雑に絡み合って結論が出されます。
本記事では、実際の裁判例で用いられている「遺言能力の判断枠組み」について、弁護士が専門的な視点から解説します。
1. 遺言能力とは?
遺言が法的に有効となるためには、遺言作成時に本人に「遺言能力」があったことが必要です。
従来、遺言能力は一般的な財産取引(契約など)に求められる能力よりも低くてよく、おおよそ「7歳〜10歳程度」の事理弁識能力があれば十分であるとされてきました。これは、遺言が死後に効力を生じるため本人が財産を失う不利益がなく、最終意思をできる限り尊重すべきという考えによるものです。
しかし、数億円もの財産処分が7歳の知能で有効とされることへの批判や、高齢者の「事実上の無能力状態」に乗じて不当な遺言が作成されるケースが社会問題化しました。
そのため、現在では、遺言能力を画一的な年齢基準で決めるのではなく、個々の遺言の種類や内容の複雑さに応じて、事案ごとに個別具体的に判断する「相対説」や「総合的判断説」が有力となっています。裁判所は、単なる医学的な能力だけでなく、遺言を取り巻くあらゆる事情を総合考慮して決断を下します。
2. 裁判所の判断手法
裁判実務における遺言能力の判断は、主に以下の二段階の構造で行われます。
3. 「医学的評価」における3つの重要ポイント
ご相談者様から「親は要介護度が高かった」「徘徊していた」というお話をよく伺いますが、裁判ではより精緻な医学的分析が求められます。
① 認知症の種類の特定
認知症の種類によって、能力の失われ方が異なります。
ア アルツハイマー型認知症
脳の全体的な萎縮が見られ、記憶や認知機能の低下が緩やかに、しかし持続的かつ全般的に進行します。
イ 脳血管性認知症
脳梗塞などが原因で発症し、障害が「まだら(斑)」になるのが特徴です。調子の良い時と悪い時があるため、遺言作成の瞬間に能力が回復していたと認定される余地が生じます。
ウ せん妄との区別
夜間に急激に発症し、幻覚などを見る「せん妄」は、持続的な認知症とは異なります。せん妄状態の異常行動があっても、昼間に意識が清明であれば遺言能力が肯定されることがあります。
② 長谷川式スケール(HDS-R)と要介護認定の差異
ア HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)
30点満点で20点以下が認知症の疑いとされる代表的な検査です。裁判でも重視されますが、あくまで「簡易スクリーニング」であり、点数だけで重症度が決まるわけではありません。テストに非協力的な性格で点数が低く出たケースなど、実務ではHDS-Rが10点以下でも遺言が有効とされた事例が存在します。
イ 要介護認定
要介護度は「介護に必要な手間と時間」を測る指標であり、精神能力の重症度とは必ずしも一致しません。介護度が高いからといって、直ちに遺言無能力となるわけではない点に注意が必要です。
③ 中核症状と周辺症状の区別
遺言能力を否定したい側は、徘徊、失禁、大声、妄想などの「周辺症状」を強調しがちです。しかし、周辺症状が激しいからといって認知症が重度とは限りません。裁判所は、記憶力の低下や見当識障害(時間や場所がわからなくなる)といった「中核症状」がどの程度進行しているかをより重視して評価します。
4. 法的評価を左右する重大要素
医学的な判定だけでは決着がつかない限界事例において、裁判所が判断するための法的要素が存在します。
① 遺言内容の「複雑さ」と「合理性」
遺言内容が「同居して介護してくれた長男に自宅を相続させる」といった単純で合理的なものであれば、認知機能が相当低下していても、自己決定権(最終意思)を尊重して有効とされやすくなります。逆に、法定相続分を大きく歪めたり、多数の不動産を複雑に分割したりする内容は、高い理解力が求められます。
② 不当な関与・誘導の有無
医学的には遺言能力が残っていそうなケースでも、特定の受遺者(利益を得る者)が不当に遺言を主導したり、弁護士を介して自己に有利な遺言を作成させたりした形跡がある場合、裁判所は遺言能力を否定したり、公序良俗違反として無効と判断する傾向があります。
③ 公正証書遺言における「口授」の厳格化
「公証人が作成したのだから絶対に有効だろう」というのは誤解です。民法上、公正証書遺言は遺言者が公証人に内容を「口授(口頭で伝える)」する必要があります。 しかし実務では、あらかじめ代理人が用意した案文を公証人が読み上げ、高齢の遺言者が「はい」とうなずくだけで作成されるケースが散見されます。近年、遺言能力に疑義がある事案において、このような作成経緯は「遺言者の真意を確保する担保機能(口授の要件)」を欠いているとして、方式違背で無効とされる裁判例が増加しています。
5. 遺言トラブルは「専門的分析」が勝敗を分ける
遺言能力の有無をめぐる裁判は、単なる言い争いではなく、「医学的証拠の緻密な分析」と「法的評価の組み立て」が勝敗を分ける極めて専門的な領域です。
これらを多角的に検討し、裁判所が重視するポイントに沿って主張を展開しなければなりません。
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