〒135-0033 東京都江東区深川1丁目1番2号 協和ビル2階18
受付時間 | 10:00~18:00 ※土曜・日曜・祝日を除く |
|---|
アクセス | 東京メトロ東西線 都営大江戸線 門前仲町駅 6番出口より徒歩3分 |
|---|
【門前仲町 弁護士解説】この遺言は本当に父の意思か?認知症の親が作成した遺言の有効性を争う「遺言無効確認」とは
福永法律事務所(門前仲町) 弁護士福永悦史 執筆
はじめに:遺された遺言書への疑問
「長年、父の介護をしてきたのに、財産のほとんどが兄に渡るという遺言書が出てきた。作成された時期、父はすでに認知症が進んでいたはずだ…」 「公正証書遺言だから有効だと言われたが、内容は生前の父が語っていたことと全く違う。本当に本人の意思なのだろうか?」
相続が開始された後、遺された遺言書の内容に納得がいかず、このような深い悩みを抱えている方は少なくありません。
遺言は、故人の最終意思を尊重するための重要な制度です。しかし、その大前提として、遺言者が遺言を作成する時点で、その内容と結果を正しく理解できる判断能力、すなわち「遺言能力」を備えていなければなりません。もし遺言能力を欠いた状態で作成された遺言であれば、たとえそれが公正証書という形式を整えていたとしても、法的に無効となります。
本稿では、福永法律事務所の弁護士が、認知症などを理由に遺言の有効性を争う法的手続きである「遺言無効確認訴訟」について、裁判所が遺言能力をどのように判断するのか、その具体的な基準と、訴訟を有利に進めるためにどのような証拠が必要となるのかを、裁判官の論文など専門的な知見に基づき、徹底的に解説いたします。
「遺言能力」とは何か?— 法律が求める判断能力の水準
遺言が無効とされる最も根本的な理由は、遺言者に「遺言能力」がなかったと判断される場合です。
1. 遺言能力の定義
法律上、遺言能力とは、「遺言をする時において、遺言の内容を理解し、その遺言によってどのような法的な結果が生じるのかを弁識(判断)できる能力」を指します 。これは、一般的な法律行為に必要とされる「意思能力」と同じものとされています 。
重要なのは、遺言能力は「ある」か「ない」かの二者択一で判断されるものではないという点です。近年の裁判実務では、遺言能力の有無は、遺言者の精神状態だけでなく、作成された遺言の内容との関係で相対的に判断されるべきとする「相対説(総合的判断説)」が主流となっています 。
2. 相対的に判断される遺言能力
相対説とは、簡単に言えば、遺言の内容が単純であればあるほど遺言能力は認められやすく、複雑であればあるほど高い判断能力が要求されるという考え方です 。
例えば、
したがって、「認知症=遺言能力なし」と短絡的に結論づけることはできず、裁判所は後述する様々な要素を総合的に考慮して、個別の事案ごとに遺言能力の有無を慎重に判断するのです。
裁判所はここを見る!遺言能力を判断する「3つの柱」
裁判所が遺言能力の有無を判断する際、特定の事実一つだけで結論を出すことはありません。数多くの裁判例を分析すると、裁判所は主に以下の「3つの柱」となる要素を総合的に評価し、結論を導き出していることが分かります 。
【第1の柱】医学的な視点(精神状態の評価)
遺言者の遺言作成当時における精神状態の医学的評価は、最も重要な判断要素です。
【第2の柱】遺言の内容
遺言書に書かれた内容そのものも、遺言能力を推し量るための重要な要素です。
【第3の柱】遺言の作成経緯
遺言がどのような状況で作成されたのか、そのプロセスも厳しく審査されます。特に公正証書遺言の場合、公証人が関与しているからといって、直ちに有効性が担保されるわけではありません。
訴訟のための準備 ― どのような証拠を集めるべきか
遺言無効確認訴訟では、遺言能力がなかったことを主張する側(原告)が、その事実を立証する責任を負います 。遺言者はすでに亡くなっているため、遺言作成「当時」の判断能力を立証するには、客観的な証拠をいかに多く集められるかが勝敗を分けます。
公正証書遺言でも無効になることはあるのか?
「公正証書遺言は、公証人が本人の意思を確認して作成するのだから、無効になることはない」という話を耳にすることがあります。しかし、これは誤解です。
近年の裁判例では、公正証書遺言であっても、遺言能力の欠如を理由に無効と判断されるケースは決して珍しくありません 。
裁判所は、公証人が作成に関与したという事実を尊重しつつも、それは遺言が有効であると判断するための一つの要素にすぎないと考えています。最終的には、これまで述べてきた医学的証拠や遺言内容の合理性、作成経緯などを総合的に評価し、たとえ公証人が「遺言能力に問題なし」と判断して遺言を作成したとしても、客観的な証拠から遺言能力が欠けていたと認められれば、その遺言は無効となります 。
特に、遺言者と公証人が初対面で、短時間のやり取りだけで遺言が作成されたようなケースでは、公証人が遺言者の判断能力の低下を見抜けなかった可能性も考慮されます。
おわりに:遺された疑問を解消するために
遺された遺言書に疑問を抱いたままでは、円満な相続は望めません。遺言の有効性を争うことは、決して故人の意思をないがしろにする行為ではなく、その「真の意思」を明らかにし、相続人間の公平を実現するための正当な法的権利です。
しかし、遺言無効確認訴訟は、専門的な医学的知見と法的主張が複雑に絡み合う、極めて難易度の高い訴訟です。死後の立証活動は困難を極めるため、ご自身だけで進めることは現実的ではありません。
福永法律事務所では、相続問題、特に遺言の有効性が争われる事案について豊富な経験と専門知識を有しております。裁判官作成の論文や裁判例の最新の動向を常に分析し、最善の戦略をご提案いたします。少しでも遺言に疑問を感じたら、手遅れになる前に、ぜひ一度、私たち門前仲町の弁護士にご相談ください。あなたの抱える問題を整理し、法的な観点から最善の解決策を一緒に考えさせていただきます。
大切な方が亡くなられた後、ご遺族には悲しみと同時に、様々な手続きや問題が降りかかってきます。特に、遺産分割は、相続人同士の意見がまとまらず、ご家族の関係に深い溝を作ってしまうことがあります。
「何から手をつければいいか分からない」
「相続人の間で話がこじれてしまった」
「特定の相続人が財産を独り占めしようとしている」
このようなお悩みは、一人で抱え込まず、弁護士にご相談ください。
弁護士は、法律の専門家として、複雑な手続きを代行し、相続人同士の対立を冷静に解決へと導きます。
当事務所は、ご相談者様の心に寄り添い、円満な解決に向けて最善を尽くします。
まずはお気軽にご連絡ください。
お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。
〒135-0033 東京都江東区深川1丁目1番2号 協和ビル2階18
東京メトロ東西線 都営大江戸線
前仲町駅 6番出口より徒歩3分
駐車場:なし
10:00~18:00
土曜・日曜・祝日