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離婚に際して最も重要な取り決めの一つが養育費です。養育費は、単なる金銭のやり取りではなく、「子の生活保持義務」という法的な根拠に基づき、親がその経済力に応じた生活を子どもに保障するために支払うべき費用です。
日本では、裁判所が調停や審判、訴訟で養育費の金額を決定する際、実務上、「養育費算定表」に基づく「標準算定方式」が広く採用されています。この方式は、夫婦双方の収入を基に、子どもの生活に必要な費用を合理的に算定し、親の収入割合に応じて分担するという理論に基づいています。
本稿では、実務で用いられている養育費算定の考え方を、「標準算定方式」の構造から具体的な計算手順、さらには算定表がカバーしきれない特別な事情の法的考慮まで、深く掘り下げて解説します。
◇「生活保持義務」という法的原則
養育費の支払いは、民法第877条の「扶養義務」に基づいています。中でも、親の子に対する扶養義務は、「生活保持義務」と解されています。これは、親が自分と同等の生活水準を子どもにも保障すべき義務を意味します。つまり、親は自分の生活水準を落としてでも、子どもに自分と同水準の生活をさせなければならないという、最も重い扶養義務です。
◇標準算定方式の確立と意義
2004年に公表された「養育費算定表」と、その理論的背景である「標準算定方式」により、養育費算定の公平性・透明性が大きく向上しました。この方式は、以下の三つの基本要素に基づいて構築されています。
養育費算定の最初のステップは、父母それぞれの「基礎収入」を正確に把握することです。
◇総収入の認定方法:源泉徴収と所得証明書
裁判所は原則として、直近1年間の年収(総収入)を基準とします。
◇基礎収入への換算:基礎収入割合の適用
総収入のすべてが生活費に充てられるわけではなく、公租公課や職業費などが差し引かれます。そこで、総収入に「基礎収入割合」を乗じて、純粋に生活費に充てられる部分(基礎収入)を算出します。この割合は、総収入の額が増えるほど、公租公課等の割合が増えるため、段階的に低下する構造になっています。
| 職業形態 | 総収入(年収) | 基礎収入割合(目安) |
| 給与所得者 | 150万円〜2,000万円未満 | 約38%〜42% |
| 自営業者 | 150万円〜1,567万円未満 | 約48%〜52% |
【基礎収入割合の理論的背景】
標準算定方式では、総収入から控除される費用(公租公課、職業費、特別経費)の額を、個別的な実費ではなく、統計的な平均値(標準的数値)で計算することで、算定の簡便性と公平性を確保しています。この標準的数値を控除した残りが「基礎収入」となります。自営業者の方が割合が高いのは、給与所得者の「給与所得控除」に相当する控除が少なく、また経費計上の中で生活費に転用可能な要素が多いと統計的に見なされているためです。
基礎収入の確定後、次のステップは子どもの生活に必要な費用の算定です。
1. 子どもの生活費指数
子どもの生活費は、親の生活費(100)を基準として、統計データに基づき「生活費指数」で表されます。これは、子どもが親と同等の生活水準を維持するために必要な費用の割合を示します。
| 子どもの年齢 | 生活費指数 |
| 0歳〜14歳 | 62 |
| 15歳〜19歳 | 85 |
子どもが15歳以上で指数が上昇するのは、主に高校教育費や、食費・被服費などの増加を反映したものです。
2. 子どもの生活費(年額)の算定
子どもの生活費は、主に義務者(養育費を支払う親)の基礎収入を基準として計算されます。
【計算式】
子の生活費 = 義務者の基礎収入×子の生活費指数合計÷(親の生活費指数+ 子の生活費指数合計)
【計算式の意味するところ】
この計算は、「義務者と子どもが同居していたと仮定した場合に、義務者の基礎収入のうち、生活保持義務の観点から子どもに割り振られるべき年額」を算出するものです。これは、親子の生活水準のバランスを保ちながら、子どもに必要な総費用を導き出すための中間的なステップとなります。
3. 義務者の分担額(養育費年額)の計算
算定された子どもの生活費を、父母双方の基礎収入の合計額に対する義務者(支払う側)の基礎収入の割合で按分し、義務者が負担すべき養育費の年額を算出します。
【計算式】
養育費年額 = 子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
【按分理論の法的根拠】
この按分計算が、親権者と非親権者の両親が、それぞれの経済力(基礎収入)に応じて公平に分担するという「生活保持義務」の核心を実現します。基礎収入が高い親ほど、より高い割合を負担することになります。
【最終的な養育費の月額】
養育費年額を12ヶ月で割ることで、月々の支払額(算定表の目安額)が確定します。
算定表は標準的な事例に基づいていますが、実際の離婚事件では、算定表が前提としない特別な事情を考慮する必要があります。
1. 高収入事例における基礎収入の調整
父母の一方または双方が極めて高収入(給与所得者で2,000万円を超えるなど)の場合、算定表の基礎収入割合の上限をそのまま適用すると、統計的な生活費の必要性を超えた高額な養育費が導き出される可能性があります。
この場合、裁判所は、基礎収入割合をさらに引き下げるなど、個別具体的な生活水準や子の真のニーズを考慮した調整を行うことがあります。これは、収入が増加するほど、その収入が「生活費」としてではなく「貯蓄」や「資産形成」に回る割合が増えるという経済実態を反映したものです。
2. 義務者側の再婚と養育費の減額
養育費の支払義務者が再婚し、再婚相手との間に子どもが生まれた場合、新たに扶養すべき家族が増えたとして、養育費の減額事由となり得ます。
3. 特別な費用の取り決め(算定表の範囲外)
養育費算定表で計算される金額には、通常の衣食住の費用、公立学校の学費(標準的な教育費)、最低限の医療費などが含まれているとされています。
しかし、以下のような高額な費用や一時的な支出については、算定表の金額ではカバーしきれません。
これらの費用については、調停や審判では毎月の養育費とは別に、「別途協議する」という条項を定めるのが通常の実務です。これにより、将来的にこれらの費用が発生した場合に、父母が改めてそれぞれの経済力に応じて費用分担を協議することができるようになります。
まとめ
養育費の算定は、一見すると算定表に当てはめるだけの単純な作業に見えますが、その背後には基礎収入の正確な認定、複雑な経済状況の法的評価、そして生活保持義務という法の理念が深く関わっています。
特に、自営業者の収入認定、特別な扶養家族の存在、あるいは高額収入のケースでは、算定表の裏側にある標準算定方式の理論を熟知した弁護士の知見が不可欠です。
養育費は、子どもの成長に不可欠な生活の基盤であり、一度決定されるとその後の変更は容易ではありません。適正な金額を確定するためには、裁判所の基準と理論を熟知した弁護士のサポートが不可欠です。
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