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【弁護士が徹底解説】裁量免責にかかわる実務|門前仲町福永法律事務所執筆

【門前仲町 弁護士解説】自己破産しても借金がゼロにならない?「免責不許可事由」と裁判所の判断基準

福永法律事務所(門前仲町) 弁護士福永悦史執筆

はじめに:自己破産=全ての借金が帳消し、とは限らない

多額の借金を抱え、返済に行き詰まってしまった場合の最終的な救済手段として、「自己破産」があります。自己破産手続きを経て「免責許可決定」を得られれば、原則として全ての借金の支払義務から解放され、経済的な再スタートを切ることが可能になります。

しかし、「自己破産さえすれば、どんな借金も必ずゼロになる」というのは誤解です。破産法には、一定の事由(免責不許可事由)がある場合、裁判所が免責を許可しない(つまり、借金の支払義務が残る)可能性があると定められています。

「ギャンブルで作った借金は免責されないと聞いたが本当か?」 「財産の一部を隠してしまった場合、どうなるのか?」 「手続き中に正直に話さなかったら、免責は受けられないのか?」

これらの疑問は、自己破産を検討されている方にとって、非常に切実な問題です。

本稿では、門前仲町で債務整理問題に取り組む福永法律事務所の弁護士が、破産法に定められた免責不許可事由の具体的な内容と、たとえ不許可事由があっても免責が許可される可能性のある「裁量免責」について、実務上運用をふまえて徹底解説いたします。

自己破産における「免責」とは?

自己破産手続きは、大別すると「破産手続」と「免責手続」の二段階で構成されます。

  1. 破産手続: 裁判所が選任した破産管財人(弁護士)が、破産者の財産を調査・管理・換価し、債権者に公平に配当する手続きです。一定額以上の財産がない場合は、この配当手続きは行われず、手続きが開始すると同時に終了します(同時廃止)。
  2. 免責手続: 破産手続で配当しきれなかった残りの債務について、裁判所がその支払義務を免除するかどうかを判断する手続きです。

この免責手続において、裁判所から「免責許可決定」を得ることによってはじめて、破産者は借金の支払義務から解放されます。つまり、自己破産の最大の目的は、この免責許可決定を得ることにあるのです。

しかし、破産法は、債権者の利益を不当に害したり、手続きの公正さを損なったりするような一定の行為があった場合には、免責を許可しないことができると定めています。これが「免責不許可事由」です。

【破産法第252条第1項】免責が許可されない11のケース(免責不許可事由)

破産法第252条第1項は、以下の11項目を免責不許可事由として具体的に定めています。実務上、特に問題となりやすいものを中心に解説します。

  1. 財産の不当な減少・隠匿(1号): 債権者に配当されるべき財産を、不当に壊したり、隠したり、無償で他人に譲り渡したりする行為です。破産直前に財産の名義を家族に変更する、財産目録に記載しない、などが典型例です。
  2. 不当な債務負担・換金行為(2号): 破産手続の開始を遅らせる目的で、著しく不利益な条件(高金利など)で新たにお金を借りたり、クレジットカードで商品を購入してすぐに著しく低い価格で換金(いわゆる「カードの現金化」)したりする行為です。
  3. 特定の債権者への不当な利益供与(偏頗行為)(3号): 他の債権者を害することを知りながら、特定の債権者(親族や友人など)にだけ借金を返済したり、担保を提供したりする行為です。債権者平等の原則に反するため、不許可事由とされています。
  4. 浪費または賭博その他の射幸行為(4号): 収入に見合わない著しい浪費(ブランド品の購入、高額な飲食・旅行など)や、ギャンブル(パチンコ、競馬、FX取引など)によって多額の借金を作り、財産を著しく減少させたり、過大な債務を負担したりした場合です。実務上、最も多く問題となる事由の一つです。
  5. 詐術を用いた信用取引(5号): 破産申立ての1年前の日から破産手続開始決定日までの間に、支払不能であることを隠して(返済能力について嘘をついて)相手を騙し、新たにお金を借りたり、商品を購入(後払い)したりする行為です。
  6. 帳簿等の隠匿・偽造(6号): 業務や財産に関する帳簿、書類などを隠したり、偽造・変造したりする行為です。(主に個人事業主などが対象)
  7. 虚偽の債権者名簿の提出(7号): 裁判所に提出する債権者一覧表に、わざと特定の債権者を記載しなかったり、架空の債権者を記載したりする行為です。
  8. 裁判所・破産管財人の調査への非協力(8号): 破産管財人が行う財産調査に対して協力しなかったり、裁判所や破産管財人に対して虚偽の説明をしたりする行為です。手続きの公正さを担保するための重要な義務違反とみなされます。
  9. 管財業務妨害(9号): 破産管財人や保全管理人(手続き開始前に財産を管理する人)の職務を、威力や詐欺的な手段を用いて妨害する行為です。
  10. 7年以内の免責取得等(10号): 過去に自己破産で免責許可決定を受けている場合、その確定日から7年以内は、原則として再度免責を受けることはできません。また、給与所得者等再生で再生計画が認可・確定した場合なども、同様に7年間の制限があります。
  11. 破産法上の義務違反(11号): 破産法が定める破産者の義務(説明義務、重要財産開示義務など)に違反した場合です。

これらの免責不許可事由に該当する行為があると、裁判所は原則として免責を許可しません。

【破産法第252条第2項】不許可事由があっても免責される?「裁量免責」とは

では、免責不許可事由に該当する行為が一つでもあれば、絶対に免責は受けられないのでしょうか? 答えは「NO」です。

破産法第252条第2項は、たとえ同条第1項の免責不許可事由が存在する場合であっても、裁判所が「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるとき」は、免責を許可することができる、と定めています。これを「裁量免責」といいます。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 (略)
 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

この裁量免責制度は、破産法の目的が単に破産者を罰することではなく、誠実に再起を図ろうとする債務者に経済的更生の機会を与えることにある という理念に基づいています。

◇裁量免責の判断で考慮される事情

裁判所が裁量免責を認めるかどうかを判断する際には、文字通り「一切の事情」が考慮されますが、実務上、特に重視されるのは以下のような点です。

  • 免責不許可事由の内容・悪質性の程度:不許可事由に該当する行為が、どの程度悪質か、計画的か、債権者に与えた損害は大きいか。
  • 破産に至った経緯:借金の原因や経緯に、やむを得ない事情(病気、失業、災害など)はなかったか。
  • 破産者の反省の度合い:自身の行為について真摯に反省しているか。
  • 破産手続への協力姿勢:破産管財人の調査に誠実に協力したか、裁判所に対して正直に事実を説明したか。
  • 経済的更生の意欲と可能性:今後、同様の過ちを繰り返さないよう具体的な努力(家計簿の作成、ギャンブル依存症の治療など)をしているか、安定した生活を送る見込みはあるか。
  • 債権者の意見:債権者が免責についてどのような意見を持っているか(ただし、債権者の反対だけで直ちに不許可になるわけではありません)。

裁判所は、これらの事情を総合的に評価し、免責不許可事由の存在を考慮してもなお、破産者に再起のチャンスを与えることが社会的に妥当であると判断した場合に、裁量免責を許可します。

裁判所(特に東京地裁)はどこを見ているか? — 免責判断の実務

東京地方裁判所倒産(破産再生)の免責に関する判断の実情は以下のようになっています。

1. 裁量免責が広く認められる傾向
 
統計的に見ても、免責不許可事由が存在する事案であっても、実際に免責が全く許可されないケースは極めて少ないのが実情です。多くの場合、何らかの不許可事由が存在しても、裁判所は裁量免責を認めています。これは、前述の通り、破産法の主目的が破産者の経済的更生にあるからです。

2. 重視されるのは「手続きへの誠実な協力」
 
裁量免責の判断において、裁判所が特に重視しているのは、破産者が破産手続に誠実に協力したかどうかです。
 具体的には、

  • 破産管財人の調査に正直に協力し、財産や借金の状況について虚偽なく説明すること。
  • 裁判所や管財人からの指示・要請に誠実に対応すること。

 が求められます。

 逆に、財産を隠したり、管財人の調査を妨害したり、虚偽の説明を繰り返したりするなど、手続きへの非協力的な態度は、たとえ他の不許可事由が軽微であっても、免責が許可されない大きな要因となります。

3. 浪費・ギャンブル事案への対応
 
免責不許可事由として最も多い浪費やギャンブルについても、その事実だけで直ちに免責不許可となるわけではありません。

裁判所は、

  • 浪費やギャンブルに至った経緯や背景(ストレス、依存症など)。
  • 本人の反省の度合い。
  • 今後の再発防止に向けた具体的な取り組み(専門機関での治療、家計管理の見直しなど)。
  • 手続きへの協力姿勢。

 などを総合的に考慮し、更生の意欲と可能性が認められれば、裁量免責を認める傾向にあります。ただし、破産申立て後も浪費やギャンブルを続けているような場合は、反省がないとみなされ、免責が厳しくなる可能性があります。

4. 裁量免責でも「全額免責」が原則
 
かつては、裁量免責の場合に、債権者への配慮から、一部の債務について支払いを継続させる(一部免責)という運用も検討されましたが、現在の実務では、裁量免責を認める場合は原則として「全額免責」とする運用が定着しています。

免責を得て再スタートを切るために

自己破産手続きにおいて免責許可決定を得るためには、以下の点が極めて重要です。

  • 正直であること: 財産状況や借金の経緯について、包み隠さず正直に申告・説明すること。財産隠しや虚偽説明は、免責を得られなくなる最大のリスクです。
  • 誠実に対応すること: 裁判所や破産管財人からの指示や調査には、誠実かつ迅速に協力すること。
  • 反省と更生の意欲を示すこと: 免責不許可事由に該当する行為(浪費、ギャンブルなど)があった場合は、その事実を真摯に反省し、二度と繰り返さないための具体的な努力(家計簿の提出、専門家への相談など)を示すことが重要です。 

 免責不許可事由に心当たりがあり、ご不安な方もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くのケースで裁量免責が認められているのが実情です。諦めずに、まずは弁護士にご相談ください。

 福永法律事務所では、門前仲町を中心に、借金問題でお悩みの方からのご相談を承っております。あなたの状況を丁寧にお伺いし、免責不許可事由の有無や裁量免責の可能性について、裁判所の実務運用を踏まえて的確にアドバイスいたします。破産手続きを弁護士に依頼することで、裁判所や管財人とのやり取りもスムーズに進み、免責許可に向けた適切な対応が可能となります。

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