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福永法律事務所(門前仲町) 弁護士福永悦史執筆
はじめに:自己破産=全ての借金が帳消し、とは限らない
多額の借金を抱え、返済に行き詰まってしまった場合の最終的な救済手段として、「自己破産」があります。自己破産手続きを経て「免責許可決定」を得られれば、原則として全ての借金の支払義務から解放され、経済的な再スタートを切ることが可能になります。
しかし、「自己破産さえすれば、どんな借金も必ずゼロになる」というのは誤解です。破産法には、一定の事由(免責不許可事由)がある場合、裁判所が免責を許可しない(つまり、借金の支払義務が残る)可能性があると定められています。
「ギャンブルで作った借金は免責されないと聞いたが本当か?」 「財産の一部を隠してしまった場合、どうなるのか?」 「手続き中に正直に話さなかったら、免責は受けられないのか?」
これらの疑問は、自己破産を検討されている方にとって、非常に切実な問題です。
本稿では、門前仲町で債務整理問題に取り組む福永法律事務所の弁護士が、破産法に定められた免責不許可事由の具体的な内容と、たとえ不許可事由があっても免責が許可される可能性のある「裁量免責」について、実務上運用をふまえて徹底解説いたします。
自己破産手続きは、大別すると「破産手続」と「免責手続」の二段階で構成されます。
この免責手続において、裁判所から「免責許可決定」を得ることによってはじめて、破産者は借金の支払義務から解放されます。つまり、自己破産の最大の目的は、この免責許可決定を得ることにあるのです。
しかし、破産法は、債権者の利益を不当に害したり、手続きの公正さを損なったりするような一定の行為があった場合には、免責を許可しないことができると定めています。これが「免責不許可事由」です。
【破産法第252条第1項】免責が許可されない11のケース(免責不許可事由)
破産法第252条第1項は、以下の11項目を免責不許可事由として具体的に定めています。実務上、特に問題となりやすいものを中心に解説します。
これらの免責不許可事由に該当する行為があると、裁判所は原則として免責を許可しません。
【破産法第252条第2項】不許可事由があっても免責される?「裁量免責」とは
では、免責不許可事由に該当する行為が一つでもあれば、絶対に免責は受けられないのでしょうか? 答えは「NO」です。
破産法第252条第2項は、たとえ同条第1項の免責不許可事由が存在する場合であっても、裁判所が「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるとき」は、免責を許可することができる、と定めています。これを「裁量免責」といいます。
(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 (略)
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
この裁量免責制度は、破産法の目的が単に破産者を罰することではなく、誠実に再起を図ろうとする債務者に経済的更生の機会を与えることにある という理念に基づいています。
◇裁量免責の判断で考慮される事情
裁判所が裁量免責を認めるかどうかを判断する際には、文字通り「一切の事情」が考慮されますが、実務上、特に重視されるのは以下のような点です。
裁判所は、これらの事情を総合的に評価し、免責不許可事由の存在を考慮してもなお、破産者に再起のチャンスを与えることが社会的に妥当であると判断した場合に、裁量免責を許可します。
東京地方裁判所倒産(破産再生)の免責に関する判断の実情は以下のようになっています。
1. 裁量免責が広く認められる傾向
統計的に見ても、免責不許可事由が存在する事案であっても、実際に免責が全く許可されないケースは極めて少ないのが実情です。多くの場合、何らかの不許可事由が存在しても、裁判所は裁量免責を認めています。これは、前述の通り、破産法の主目的が破産者の経済的更生にあるからです。
2. 重視されるのは「手続きへの誠実な協力」
裁量免責の判断において、裁判所が特に重視しているのは、破産者が破産手続に誠実に協力したかどうかです。
具体的には、
が求められます。
逆に、財産を隠したり、管財人の調査を妨害したり、虚偽の説明を繰り返したりするなど、手続きへの非協力的な態度は、たとえ他の不許可事由が軽微であっても、免責が許可されない大きな要因となります。
3. 浪費・ギャンブル事案への対応
免責不許可事由として最も多い浪費やギャンブルについても、その事実だけで直ちに免責不許可となるわけではありません。
裁判所は、
などを総合的に考慮し、更生の意欲と可能性が認められれば、裁量免責を認める傾向にあります。ただし、破産申立て後も浪費やギャンブルを続けているような場合は、反省がないとみなされ、免責が厳しくなる可能性があります。
4. 裁量免責でも「全額免責」が原則
かつては、裁量免責の場合に、債権者への配慮から、一部の債務について支払いを継続させる(一部免責)という運用も検討されましたが、現在の実務では、裁量免責を認める場合は原則として「全額免責」とする運用が定着しています。
自己破産手続きにおいて免責許可決定を得るためには、以下の点が極めて重要です。
免責不許可事由に心当たりがあり、ご不安な方もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くのケースで裁量免責が認められているのが実情です。諦めずに、まずは弁護士にご相談ください。
福永法律事務所では、門前仲町を中心に、借金問題でお悩みの方からのご相談を承っております。あなたの状況を丁寧にお伺いし、免責不許可事由の有無や裁量免責の可能性について、裁判所の実務運用を踏まえて的確にアドバイスいたします。破産手続きを弁護士に依頼することで、裁判所や管財人とのやり取りもスムーズに進み、免責許可に向けた適切な対応が可能となります。
借金問題は必ず解決できます。一人で悩まず、勇気を出して、当事務所の弁護士にご相談ください。初回のご相談は無料です。
多重債務でお困りの方は、一人で悩まず早めに相談をすることが大切です。
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