〒135-0033 東京都江東区深川1丁目1番2号 協和ビル2階18
受付時間 | 10:00~18:00 ※土曜・日曜・祝日を除く |
|---|
アクセス | 東京メトロ東西線 都営大江戸線 門前仲町駅 6番出口より徒歩3分 |
|---|
【門前仲町 弁護士解説】「元々、首が悪かったから…」被害者の持病(既往症)は賠償額にどう影響する?「素因減額」の考え方と反論方法
福永法律事務所(門前仲町) 弁護士福永悦史執筆
はじめに:保険会社からの一方的な「減額通知」
「交通事故の治療を続けていたところ、相手方の保険会社から『MRI画像を見ると、事故前から首の骨に変形が見られます。これは今回の損害に影響しているので、賠償金を減額します』と言われてしまった。痛みの原因は明らかに事故なのに、納得がいかない…」
被害者が事故前から何らかの身体的な特徴や疾患(既往症)を持っていた場合に、それを理由に賠償額を減額することを、法律の世界では「素因減額」と呼びます。これは、損害の公平な分担という観点から認められている法的な考え方ですが、保険会社は しばしばこの「素因減額」を拡大解釈し、本来であれば減額すべきでないケースでまで、一方的に賠償金の減額を主張してくることがあるのです。
しかし、被害者側に何らかの身体的要因があったからといって、常に賠償金が減額されるわけではありません。これまでの裁判例では、裁判所は素因減額を認めるにあたり、非常に厳格な基準を設けています。
本稿では、門前仲町で交通事故に注力する福永法律事務所の弁護士が、この複雑な「素因減額」の問題について、どのような場合に減額が認められ、どのような場合は認められないのか、その法的な考え方を,裁判例や裁判所の実務運用を基に、徹底的に解説いたします。
「素因減額」とは何か?— 法的な考え方と根拠
1. 損害の公平な分担
素因減額とは、交通事故によって損害が発生・拡大した原因が、加害者の行為だけでなく、被害者自身が持っていた要因(素因)も寄与している場合に、その寄与の程度に応じて損害賠償額を減額調整することをいいます。これは、損害の全てを加害者に負担させることが、かえって不公平になる場合があるという、損害の公平な分担という理念に基づいています。
この考え方を確立した最高裁判所の判例(最高裁昭和63年4月21日判決)は、被害者が有していた身体的な要因が「疾患」にあたる場合には、賠償額を減額することができる、との枠組みを示しました。加害者は、事故当時の被害者のありのままの状態で損害を賠償する責任を負うのが原則ですが、その「ありのままの状態」が平均的な健康状態からかけ離れた「疾患」であった場合には、例外的に減額を考慮するという考え方です。
2. 素因減額の2つのタイプ
素因減額は、被害者が持っていた要因の種類によって、大きく二つに分類されます。
減額の対象となるのは「疾患」のみ —「単なる身体的特徴」との境界線
素因減額の議論において、最も重要な核心部分は、被害者が持っていた要因が、減額の対象となる「疾患」なのか、それとも減額すべきでない「単なる身体的特徴(個性)」なのか、という区別にあります。
◇原則:加害者はありのままの被害者を受け入れる
損害賠償の基本的な考え方として、加害者は、被害者がたまたま平均的な人より身体的に弱い部分があったとしても、その結果について責任を負うのが原則です。被害者がどのような身体的特徴を持っているかは偶然の事情であり、そのリスクを加害者が負うべきと考えられているからです。
◇裁判実務における「疾患」と「身体的特徴」の区別
保険会社は、MRI画像に少しでも変性が見られると、一律に「既往症」と決めつけて減額を主張してきますが、それが法的に減額事由となる「疾患」なのか、それとも減額すべきでない「身体的特徴」なのかを、医学的知見に基づいて峻別し、反論することが極めて重要です。
実務で争点となる具体的なケースと裁判所の判断傾向
1. 頚椎・腰椎の疾患
むち打ち損傷などの事案で、素因減額が最も争点となりやすいのが、頚椎や腰椎に既存の疾患があった場合です。
2. 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
骨が脆くなる骨粗鬆症も「疾患」にあたりますが、これが減額事由となるかは慎重に判断されます。特に高齢の女性の場合、骨粗連症は非常に多く見られるため、ある程度は「個体差」の範囲内と考えるべきであるとの議論もあります。裁判所も、軽度の骨粗鬆症を理由に直ちに減額することには消極的です。骨折の態様や骨密度の数値などを具体的に検討し、骨粗鬆症が骨折の発生・拡大に明らかに寄与したと認められる場合に限り、限定的に減額が考慮されます。
保険会社の不当な減額主張にどう対抗すべきか
保険会社から素因減額を主張された場合、決してそれを鵜呑みにせず、以下の観点から専門家である弁護士に相談し、適切な反論を行うことが重要です。
◇医学的観点からの反論
ア 主治医の意見の重要性
まず、主治医に相談し、保険会社から指摘された所見が、賠償額を減額すべき「疾患」と言えるのか、それとも「加齢性変性」のような単なる身体的特徴に過ぎないのかについて、医学的な意見をもらうことが極めて重要です。弁護士は、その医師の意見書や医学文献などを基に、指摘された所見が法的に減額の対象となる「疾患」にはあたらないことを主張します。
イ 事故との因果関係の主張
仮に何らかの疾患があったとしても、現在の症状はあくまで今回の事故という外力によって新たに生じたものであり、既存の疾患が症状を悪化させたわけではないとの主張をします。特に、事故前に無症状であったことは、極めて強力な反論材料となります。
◇法的観点からの反論
ア 裁判例の提示
弁護士は、ご提供いただいた論文で分析されているような過去の裁判例を調査・分析し、類似の事案で素因減額が否定された、あるいは減額率が低く抑えられた裁判例を保険会社に提示し、安易な減額に応じないよう交渉します。
イ 減額割合の交渉
仮に「疾患」の寄与が一部認められるとしても、保険会社が提示する減額割合(例えば40%、50%など)が、裁判所の傾向に照らして過大であることを主張し、より低い割合での解決を目指します。
素因減額は、医学と法律が交錯する非常に専門的な分野です。被害者ご自身で保険会社と対等に交渉することは、事実上不可能に近いと言えるでしょう。
門前仲町の福永法律事務所では、交通事故案件における豊富な経験に基づき、医学的な論点についても深く検討し、依頼者の正当な権利を守るための弁護活動を行っています。保険会社から素因減額を理由に不当な低額の示談金を提示され、お悩みの方は、示談書にサインする前に、ぜひ一度、当事務所の弁護士にご相談ください。
突然の交通事故。治療や仕事への影響、保険会社とのやり取り――。
心身の負担に加え、先行きの見えない不安に押しつぶされそうになる方も少なくありません。
そんな中で、「保険会社の提示額は妥当なのか」「後遺症が残りそうだがどうすればよいのか」と悩まれても、冷静な判断は難しいものです。
当事務所では、交通事故の被害者が本来受け取るべき正当な補償を確実に受け取れるよう、代表弁護士が直接対応し、最初から最後まで責任をもってサポートします。
ご自身の自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、多くの場合、費用のご負担なくご依頼いただけます。まずは保険内容をご確認ください。
お電話でのお問合せ・相談予約
<受付時間>
10:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く
フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。
〒135-0033 東京都江東区深川1丁目1番2号 協和ビル2階18
東京メトロ東西線 都営大江戸線
前仲町駅 6番出口より徒歩3分
駐車場:なし
10:00~18:00
土曜・日曜・祝日