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相続放棄について弁護士が解説

【江東区の弁護士が解説】相続放棄にかかわる諸論点

【相続放棄の意義・法的性質と歴史的背景】

わが国の民法は、被相続人の死亡により当然に相続が開始し、被相続人の一身専属権を除く一切の権利義務が法律上当然に相続人に帰属する当然承継主義を採用しています。しかし、近代法一般の傾向に沿い、相続人に被相続人の権利義務の承継を強制せず、個人の意思を尊重する観点から、包括的な承継を拒否する選択権として「相続の放棄」の制度を設けています。この制度の根底には、親の借金であっても子が返すことを強制されないという自己責任の原則や、個人の保護という理念があります。法的には、被相続人の死亡により当然に発生した包括承継の効果を、自己のために遡及的に消滅させる目的で行う相手方のない単独行為と位置づけられています。

 

【放棄の方式・要件と「事実上の放棄」との区別】

相続放棄は、家庭裁判所に対する「申述」という厳格な要式行為をもってなされなければなりません。これは、放棄が本人の真意に基づく重大な身分上の行為であり、債権者や他の相続人の地位に甚大な影響を及ぼすため、法律関係を明確化する趣旨です。また、相続放棄は包括的な地位に対する選択であるため、一部の財産のみの放棄や、条件・期限を付した放棄は無効と解されています。さらに、相続開始「前」の事前放棄は認められていません。遺留分については家庭裁判所の許可を得ての事前放棄が可能ですが、相続権そのものの生前放棄や事前の放棄契約は、現行法では明確に否定されています。 実務上注意を要するのは、家庭裁判所での正規の手続を経ない「事実上の相続放棄」です。例えば、遺産分割協議において自己の取得分をゼロ(無分配)とする合意をした場合や、相続分を他の相続人に譲渡した場合などです。これらは遺産分割や財産権の処分としては有効でも、民法上の相続放棄の効力は生じないため、債権者からの債務履行請求を拒むことはできず、対外的な責任は残存します。

 

【熟慮期間と起算点の特例に関する判例法理】

 相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内(熟慮期間)に、単純承認、限定承認、または放棄のいずれかを選択しなければなりません。この期間の起算点につき、かつての判例は「死亡事実及び自分が相続人となった事実を知った時」と厳格に解していました。しかし、被相続人と長年交際が絶え、相続財産が全くないと信じていたために期間を徒過してしまった相続人にまで、債務の負担を強いるのは酷です。 そこで最高裁(最判昭和59427)は、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時、又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当であるとの判断を示しました。すなわち、被相続人との生活歴や交際状態から、相続財産(特に消極財産たる債務)が存在しないと信じるについて「相当な理由」がある場合には、例外的に起算点が繰り下げられ、債権者からの請求を受けて初めて債務を知った時点などから3ヶ月以内であれば放棄の申述が受理される途が開かれています。

 

【制限能力者・胎児等における起算点の特則】

判断能力が不十分な相続人を保護するため、熟慮期間の進行には特則があります。相続人が未成年者又は成年被後見人である場合、起算点は「その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時」となります。法定代理人が就職して初めて認識した時から進行を開始すると解する見解も有力です。 また、胎児については出生の時より期間が進行すると解されており、不在者の場合には、不在者財産管理人が選任されない限り、後に帰還して相続開始を知った時から3ヶ月以内であれば放棄が可能とされています。

 

【法定単純承認(放棄権の喪失)に関する諸問題】

相続人が熟慮期間内に相続財産の全部又は一部を「処分」したときは、単純承認をしたものとみなされ、以後、放棄をすることはできなくなります(法定単純承認)。この「処分」とは、財産の現状や性質を変更する行為であり、家屋の取壊し、債権の取立て、和解などが該当します。ただし、財産を維持する「保存行為」や、民法602条に定める期間を超えない短期賃貸借は例外として許容されます。また、道義上当然とされる葬儀費用の支払いや、経済的価値のない形見分けの品の受領などは、実質的な処分に当たらず法定単純承認を構成しないと解されています。 さらに、限定承認や放棄の申述をした「後」であっても、相続財産を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意で財産目録に記載しなかった場合は、背信的行為への制裁として単純承認とみなされ、放棄の効力が覆滅します。ただし、この背信行為の前に、他の共同相続人がすでに単純承認や限定承認をして法的な清算手続が確定しているような例外的な場合には、適用されないとする見解もあります。

 

【再転相続および相続資格の重複における放棄の取扱い】

 相続人が選択権を行使せずに熟慮期間内に死亡した場合(再転相続)、元の被相続人(甲)に対する承認・放棄の選択権は、次順位の相続人(丙)に包括的に承継されます。この場合、丙は自己の被相続人(乙)の相続について承認・放棄を決定する期間内に、甲の相続についても決定することになります。丙が乙の相続を放棄すれば、当然に甲への選択権も失いますが、乙の相続を承認した上で、甲の相続のみを放棄することは可能と解されています。 また、一人の人間が複数の相続資格を重複して有する場合(例:祖父の養子となっている孫が、実父の代襲相続人としての資格も併有する場合)、一方の資格における相続放棄は原則として他方の資格における相続権に影響せず、資格ごとに別個に放棄や承認が可能であるとされています。

 

【放棄の撤回禁止と民法総則上の取消権の行使】

 一度家庭裁判所になされた放棄の意思表示は、たとえ熟慮期間内であっても撤回することができません(民法9191項)。これは、放棄によって生じた他の相続人の相続分の増加や、次順位者への相続権の移行といった法律関係を早期に確定させ、関係者の信頼を保護するためです。 しかし、撤回が禁止される一方で、民法総則編および親族編の規定に基づく「取消し」は妨げられません(民法9192項)。例えば、未成年者が法定代理人の同意を得ずに単独で放棄した場合や、詐欺・強迫によって放棄の申述を強いられた場合には、これを取り消すことが可能です。この取消権の行使は、追認をすることができる時から6ヶ月間、または放棄の時から10年という短期の消滅時効(または除斥期間)にかかります。

 

【 錯誤を理由とする相続放棄の効力争い】

 相続放棄が「錯誤(勘違い)」に基づいてなされた場合、その無効(現行法下では取消し)を主張できるかも実務上頻出する論点です。被相続人に借金はないと信じて放棄したが実は積極財産の方が多かった場合や、逆に財産があると思って承認した事案などにおいて問題となります。 判例および通説は、相続放棄のような身分法上の行為であっても民法95条(錯誤)の規定が適用されるとしています。動機の錯誤であっても、その動機が明示的または黙示的に表示され、意思表示の要素となっていると認められれば、錯誤による無効(取消し)の主張が可能です。ただし、単なる財産評価の見込み違いや、一般的な調査義務を著しく怠った重大な過失がある場合などは、取引の安全や法的水準との均衡から、錯誤の主張が排斥されることが多い点に注意が必要です。

 

【詐害行為取消権の適用可否と破産手続との関係】

 相続人自身が多額の負債を抱え無資力状態にあるとき、自己の債権者を害することを知りながら相続放棄を行った場合、当該債権者がこの放棄を「詐害行為」として取り消せるかが問題となります。 この点につき、最高裁は、相続放棄は詐害行為取消権(民法424条)の対象にはならないと判示しました。その理由は、相続放棄が純然たる財産的行為ではなく、相続人の人格的決断に基づく一身専属的な身分行為であること、また、既得の財産を積極的に減少させる行為ではなく、単に財産の増加を拒否する行為に過ぎないためです。この論理は破産手続にも妥当し、相続人が破産手続開始決定を受けた後に放棄をした場合でも、破産管財人による否認権行使の対象にはならないとされています。対照的に、正規の放棄手続を経ない「事実上の放棄(自己の取得分をゼロとする遺産分割協議)」は財産権を目的とする法律行為とみなされ、詐害行為取消権の対象となるため、手続の選択には決定的な差異が生じます。

 

【放棄の絶対的遡及効と放棄後の管理継続義務】

 家庭裁判所で放棄の申述が受理されると、その者は相続に関して「初めから相続人とならなかったものとみなす」という遡及的な効力が発生します(民法939条)。これにより、放棄者は被相続人の財産・債務から完全に離脱します。同順位の共同相続人がいればその者の相続分が増加し、第一順位の全員が放棄した場合は次順位の血族(直系尊属や兄弟姉妹)へと順次相続権が移転します。 しかし、放棄の効果が発生したからといって、直ちに相続財産に対する一切の物理的責任から解放されるわけではありません。放棄者は、その放棄によって新たに相続人となった者(次順位者や共同相続人、あるいは相続財産清算人)が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続する義務を負います(民法940条)。これは、管理者の不在による相続財産の散逸や毀損を防ぐための規定です。この義務を怠って財産を劣化させた場合、損害賠償責任を問われる可能性があるため、法律上の相続権は消滅しても、現実の引き継ぎが完了するまでは事実上の管理責任が残存するという点に、実務上の強い留意が求められます。

 

 

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